まっくろくろすけでておいで~!!!
日本アニメーター・演出協会(JAniCA)がアニメの制作現場の生の声をアニメーターにアンケート調査した「アニメーション制作者実態調査報告書2019」を公開した。
JAniCAがどんな組織かというと、その名の通り、アニメーターや演出家などのアニメ制作者を支援するための団体。
このJAniCAがアニメーターや演出家など、アニメ制作の現場で働く人々に対して行ったアンケート調査の結果をPDFでまとめて公開している。
アンケートの回答者は357人。割合は24歳以下が10%、25~29歳が16%、30~34歳が14.4%、35~39歳が16.3%、40~44歳が14.7%、45~49歳が11.7%、50歳以上が20%。
男性の方が若干多めで、結構高齢のアニメーター多いんやなぁという印象。40歳以上が45%以上。

回答者の生活形態(配偶者の有無や子供の有無)。

回答者の社会保障状況。
特に気になるのはやはり「備えをする経済的余裕がない」(28.8%)が約3割もいるという点。こればっかりはアニメ会社以外でもいるやろうけど、どれくらいの割合なのかはわからないので何とも言いようが…

勤続年数も30年以上が16.5%。

2017年に携わった職種および最も多くの収入を得た職種。最も多い職種は原画(52.9%)・LOラフ原(46.1%)・第2原画(33.5%)。

携わったアニメ制作の仕事のうち、媒体別の仕事の割合。
TVシリーズが圧倒的(78.8%)で、次点で劇場用映画(54.2%)、3番手でゲーム(23.8%)。

より細かい数字

アニメ制作以外の仕事の報酬にまつわるデータ。単位が万円となっています。
「会社役員報酬」や「制作に関与した作品のロイヤリティ・著作権収入」の他に、「マンガ家」「イラストレーター・同人誌」「教える仕事」など。他にも右端のボックス内には「LINEスタンプ」や「web制作」「キャラデザ」などが書かれており、その能力を活かした副業が盛んに行われていることがうかがえます。

面白いと思ったのは、「仕事での契約書の取り交わし状況」というスライド。
契約書を取り交わすもしくは取り交わさない理由は、「アニメ制作会社や経営者は無責任でいい加減な人が多いから」「制作会社側に契約書作成能力がない」「制作会社の法務部が下請法ガイドラインを知らない」などなど。

就業形態は圧倒的に「フリーランス」(50.5%)が多め。

1日/1か月当たりの平均作業時間。Oh…

そして月当たりの平均休日数。

さらには年間収入データも。あれ…物価の高い東京在住の方が多かった気がするのだけれども…?

月収10万円以下の、1人暮らしだとどう考えても生活していくだけで貯金なんてできなさそうな収入の人が、5人に1人の割合でいる模様。そもそも東京だとこの収入では1人暮らしのための家賃も払えないのでは…?

仕事を続ける理由。これだけブラックさムンムンの中で「なんとなく」続けてるやつの強メンタルっぷりよ…w

仕事上の問題として寄せられたフリー回答には、「体調を崩したりうつ病になる人が多い」「フリーランスなので働けなくなると社会保障もなく、収入も止まるため、無理をして働かざるを得ない」「臭い人が多い」「仕事の内容が重くなっている」「むちゃな要求が増えた」「版権物の権利等に関する説明がない」「作業者の大半がプロのレベルに達していない」「アニメーターの意識が低い」「なんでも監督+総作画監督で直してなんとかクオリティを保つことがあたりまえだと制作が思っている」「原画と動画は作業量が千倍違っても単価がほぼ同じ。自分は時給にすると400円くらい」「スケジュールを立てるという意志がない」「根性論でやれと言われる」「単価が安すぎる」「古くブランドのあるスタジオほど体質が古く単価は安く、カットの作業内容が難しい」「ベテランの力が強すぎて現代の視聴者の求めるものが作れない」などなど。
とにかく会社としての体制が古く、原画当たりの単価が安いことがそのまま給料の低さに直結しているらしい。そして、アニメ作品として求められていることが多様化しているため、求められる仕事としてはより高度なものになってきていると。
それでいて「アニメーターの大半がプロのレベルにない」という回答もあるように、一部の(おそらくベテラン)人はやはり自分の作るものに妥協できず、とにかく根性でもっと良いものを描けと要求している感じが文字から浮き出てるよね…
安心して仕事に取り組むために必要なものとしては70%以上の人が報酬を挙げてますわ。

それでも63.4%の回答者が働ける限りアニメの現場で…と回答しているというのはなんとも涙ちょちょぎれるわい…
最近はクラウドファンディングでアニメ制作のお金を集めるだとか、Netflixオリジナルの作品を制作するだとか、これまでのアニメ制作とは異なるアプローチも増えているので、もっと現場の末端までしっかりお金がいきわたるような形をすべてのアニメ制作会社に模索してほしいですね。
出典:
アニメーション制作者実態調査報告書2019